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「ごちそうさま」
コップをテーブルに置いて、葵衣はテレビのリモコンを取る。
兄がスマホのゲームを始め、父は書斎に向かい、母はテーブルを片付ける。
××××××××
「うらなみ れいです。よろしくお願いします」
委員会の顔合わせで、葵衣は昨日読み方のわからなかった少女の名前を知った。
小柄で、かわいい雰囲気の子だ。
「田村 葵衣です。よろしく」
それだけ。
いつか友達になれるかもしれないが、今日はそれだけ。
委員会の顔合わせが終わり、帰ろうとしたとき、浦浪麗に葵衣は声をかけられた。
「ね、田村さん。よかったら今日、うちに来ない?」
初対面。
初対面で、いきなりお宅訪問はハードルが高い。
「友達になろうよ、アタシ、田村さんみたいな美人の友達が欲しいかったの!」
人懐っこい笑顔につい、葵衣はうん、と言ってしまった。
××××××××
「ここ!」
本当に近かった。
玄関の鍵を開けて、二人は浦浪麗の家に上がる。
「お邪魔します……」
しぃん、と静まり返った家は葵衣の目には生活感が無い。小洒落た家で羨ましいな、と感じた。
「ちょっと待っててね、洗濯物だけ取り込んじゃうから!」
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