転送機の誕生

3/5
前へ
/8ページ
次へ
転送機が開発されて数年後ー 各所に転送ポストが設置され、郵便ポストはなくなった。 郵便局もなくなり、代わりに転送局がある。 転送ポストによる転送作業は次の通りだ。 パネルをタッチし転送先を決定後、転送しようとする荷物を台に乗せ重量測定。表示される金額を挿入すると、指定した場所に転送される。 開発当初より転送技術は進み、重い荷物、大きい荷物も転送できるようになったが、さすがにポストでは対応できない。転送局に行く必要がある。 転送局員は郵便局時代と殆ど変わらず。集荷と配達こそなくなったが健在である。適応力には目を見張るものがある。 トラック運送? 残念ながらもう廃業済みだ。 さて、俺は今、東京の友人に荷物を送るために転送局に来た訳だが、ここに来る度にどうしても考えてしまうことがあった。 人を転送機にかけたらどうなるのだろうか、と。 毎回そんなことを考えているうちに、自分の番が回って来る。 「あ、雑賀さん。またダンボール箱ですか」 「すみませんいつも。東京の友人がどうしても欲しいというのでね」 もう何度も足を運んでいる為か、受付のお姉さんに顔と名前を覚えられてしまっている。 ダンボールの中には服が多数入っている。服1着だけならポストで事足りるが、10着以上なら転送局に頼んだ方が安上がりだ。 「送る方の都合も考えて欲しいですよ。どうしてもこちらの地域の服が欲しければ、転送機で友人自身が来ればいいのに」 「いえいえ、それはダメです。法律で禁じられていますよ」 そう、転送機による人の移動は禁じられているのだ。 「瞬間移動の衝撃に人体が耐えられないだとか、行方不明になるとか、様々な理由が蔓延っていますよね」 「どれが真実か判りませんわ」 「いつか自分の体で試そうかと思います」 「こらこら、ダメですって」 「冗談です。では転送お願いしますね」 「承知いたしました。ありがとうございます」 転送局を後にし、外をほっつき歩きながら考えることはやはり転送機についてだ。 ゲームだとワープポイントがあって人の移動が容易だけれども、現実は厳しいだろうか。 人体転送禁止なのは危険だからと言われているが、誰か試したことがあるのだろうか。 やはり試さずにはいられない。 となると、まず転送局の転送機にどう近づくかが問題だ。 あのお姉さんの協力を何とか仰げないだろうか。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加