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「若松さん、好きです。付き合って下さい。」
それは、突然の申し出だった。
俺は30も半ばのオッサンだし、相手は高校生だ。
定職にもつかず、フリーターのまま生きてきた男を好きになる女性など居ないと思っていた。
そして、彼女は若すぎる。
「……分かると思うけど、俺は君とは付き合えない。俺はフリーターだし、今は……」
「ですよねー!」
笑顔で返してきた彼女に俺は戸惑った。
「若松さんが私の事どう思ってるかなんて分かってました。バイト辞めるのも、なんか事情があるみたいだし。でも、最後に伝えたくて……」
無理に笑顔を作っているのかと思案して、何か話さなくてはと言葉を探す。
「……熊野さんがどうとかいう問題じゃないんだ。だから、今好きな人がいる分けでもない。だから……」
「私が、メタトロンみたいに美人で大人だったら良かったんですけどね~!」
「いや……それは……」
「ありがとうございます。引き留めてすみませんでした!」
彼女は走って何処かへ行ってしまった。追いかける事は出来ない。何もしてやれない。
心配ではある。彼女は自分の能力について悩んでいた。もう相談に乗る事は出来ないだろう。
しかし、私も自分の力と向き合う時が来た。彼女を巻き込まずに済んで良かったかもしれない。
これで良かったんだ。
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