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「あ、あの……さぁ」
息苦しさに耐えきれなくなって、声をかけてみる。
恐る恐る。
「はい」
それに梓さんは真っ直ぐに返事をしてくる。
あー。苦手かも。
何だろうなぁ。
何でだろうなぁ。
「お茶とか……飲む?」
「いただきます」
「うん、じゃあ持ってくる」
持ってくる。
そんな言うほどの距離はない。
二、三歩歩いてドアを開けたら、すぐキッチンで冷蔵庫。
そっからペットボトルとコップを持ってくるだけの簡単な作業です。
簡単な作業です。
簡単な作業のはずだった。
緊張しすぎてたった瞬間に足が縺れた。
何とかしてキッチンまで辿り着く。
なんか手が震えて、握ったコップ二つがカチカチ音を立てる。
二リットルのペットボトルを引き抜いて、部屋に戻る。
叩きつけるようにコップを梓さんの前に置く。
ここまでは、まだマシだった。
キャップを外したペットボトル。
手から滑り落ちて、机と床に中身をぶちまけた。
「うわ、悪い!!」
慌ててペットボトルを机の上に立てて置く。
手を伸ばしたら、すぐにタオルが取れた。
狭い部屋って、こういうとき便利。
「自分も手伝います」
梓さんが軽く身を乗り出す。
その瞬間に、手が机に当たったらしい。
机が揺れて、ペットボトルがぐらぐら揺れる。
「「あ」」
二人同時に伸ばした手が、ペットボトルに当たる。
そして二人ともつかみそこねた。
ペットボトルがまるでスローモーションのように、二人の間を落ちていった。
あたりに残りの中身をぶちまけながら。
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