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見上げると、クヌギの木の枝の間から空が見えて、かつての仲間だった鳥達が気持ち良さそうに風に乗っている姿が見えた。
その眩しい姿から目を逸らすと、彼らの鳴き声が聞こえた。
どうやら、僕を探しに来てくれたようだった。
「君のこと、探しにきてくれたんじゃないかい」
クヌギの木は僕の体を揺する。
「違いますよ」
どうか探さないでほしい。
僕の姿を見たら、きっと、悲しんでくれると思う。
だけど、彼らには、どうすることも出来ない。
苦しめて、迷惑をかけてしまうだけだ。
だから、このまま、消えてなくなりたいんだ。
仲間たちの鳴き声は、とても美しく優しさに満ちて、この森全体に降り注ぐ。
彼らが奏でる旋律のシャワーを浴びるのは、心地よかった。
やがて、彼らはあきらめたのか、姿を消した。
「君の声も、あんなに美しいのかい」
「え…」
「聞いてみたいな」
僕は、歌った。
空腹のせいで、あまり大きな声は出せなかったけれど、クヌギの木にたいする感謝の気持ちを込めて歌った。
歌い終わると、クヌギの木は
「素晴らしいね」
と偉く感動してくれて、拍手の代わりに、枝の間からぽろぽろと木漏れ日を落とした。
翼はなくなった。
だけど、僕にはまだ、歌があった。
足元に並べられたどんぐりをひとつとって、かじった。
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