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再会
這いずるように歩き続けて一時間、やっとの思いで辿り着いた。
僕の愛する人はどこにいるのだろう?
自分の命よりも心配だった。
僕の余命よりも大切にしたい存在がそこにいた。
玄関の前で倒れ込んでいた。
彼女も僕と同じ症状だった。
僕は彼女の名前を呼んだ。
すると、震えながらこちらを見上げてくれた。
よかった、まだ生きていた。
だが、僕よりも明らかに悪化していた。
それにもかかわらず彼女は笑った。
「・・・・・君、お願い・・・・・・、・・・・・・・まで連れて行って・・・・・・・・」
今にも途絶えそうな小さな呼吸を乱してまでも彼女は僕に願った。
呪いへの些細な抵抗として僕は彼女の願いを背負った。
彼女は呼吸だけで精一杯だった。
僕も次第に吐血するようになってきた。
胸の傷も広がり、シャツは自分の血で真っ赤になっていた。
彼女を抱えながら、さらに一時間。
ようやく彼女の願いの場である公園に辿り着いた。
彼女と出逢えた歓びに浸れる余裕はなかった。
彼女の願いを叶えることが最優先だった。
しかし、僕と彼女が通った道筋を僕は知っていた。
そう、よく知っていた。
この道は僕と彼女が付き合っていた頃によく通ったデートの道だった。
彼女は知っていてそう言ったのだろうか。
もう彼女の呼吸は静まりつつあった。
僕は何度も彼女の名を呼んだ。
彼女はそっと深呼吸をして
「・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・君、ありがとう」
と泣きながら笑みを見せた。
そうして目を閉じた。
まるで身体の傷と血が嘘であったかのように幸せそうな寝顔を見せた。
呪いが彼女の命を奪い去った。
彼女は幸せだったのだろうか。
死後の世界を信じてあげなくては彼女が報われないような気がしてならない。
最後に僕がすべきことなんてわかるはずがなかった。
周りには誰もいない。
誰も何も言ってくれない。
僕は彼女の亡骸を抱えて、ある駅のターミナルへと向かった。
僕は涙が止まらなかった。
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