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咆哮
身体が思い通りに動いてくれない。
呪いは刻一刻と僕を死へと引き寄せる。
死の重力に誘惑されるように身体からは血が流れ出て、熱が体内を溶かす。
駅のターミナルに行ったところで特に何もない。
ただ、呪いにこの命をくれてやる前に何か遺しておきたくなったのだ。
荒廃した世界に舞う死の香り。
この静けさは嵐の前の静けさではなく、嵐がすべてを攫っていった後の静けさだ。
君の寝顔は穏やかだった。
僕もこのように死を受け入れられるだろうか。
君の命を奪った呪いを赦せるだろうか。
それはまだできない。
今、傷口の奥にある心は憎しみを隠せない。
罪を認めるものか。僕のことはどうでもいい。
所詮、君のことすら忘れていたような忌むべき僕は罪を背負うべき人間なのだから。
その罪で僕が死のうとも構わない。
しかし、あんなに優しい子の命を奪ってよいなんてことはない。
罪なき人間に罪を背負わせ、呪いを背負わせることだけは赦せるはずがない。
真珠のように滑らかな柔肌が無残に裂かれている。
どうして君がこんな目に遭わなければいけないのだ。
諦めていたはずの抵抗は呪いへの怒りに変わった。
僕は叫んだ。
悔しさも怖さも怒りも憎しみも。
想いのすべてを呪いにぶつけた結果が叫びだった。
木霊として僕の感情は世界に散らばった。
虚しさが僕の胸の中に残された。
たった一人の小さな想いでは世界は変えられない。
愛した人一人救えやしない。
僕は地面に崩れた。
君を抱えた腕も動かなくなった。
何度も叫んだ。
何度も、何度も叫んだ。
人類最後の想いを。
喉からはもう血しか出なくなった。
胸に刻まれた呪いの十字傷は臍にまで至り、真っ赤な体内を覗かせている。
もう僕しかいないのだろうか。
もし、そうであったならば、僕は世界に何を遺せるのだろうか。
君のために何ができるのだろうか。
もう、呪いに怒りをぶつけている時間も僕には残されていないらしい。
今の僕には現実を受け止めることしかできなかった。
この虚しさを君に触れることでしか埋めることができなかった。
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