誓い

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誓い

「君だって僕と同じじゃないか・・・僕なんかより自分を大切にしなきゃいけないんじゃなかったの?」 僕は君に語りかけたが、声はほとんど出ず、血が君の傷口に落ちた。 世界に何も遺せなくてもいい。 僕は最後の人類として僕の人生を生き抜こう。 僕のしたいこと、それは君の傍にいること。 よかった、これで僕はもう君に嫌われずに済む。 君の隣で仰向けになる。 空は果てしなく遠い。 そして、果てしなく広いはずだが、それも僕には小さく思えた。 もうすぐどこまでも行けるという確信が僕にはあった。 音はない。 風もない。 悲しい終焉だ。 ほんの少しだけ無念だ。 だが、今の僕は穏やかだ。 痛みも何も感じない。 ふと、体が浮いた気がした。 黒々とした死のカーテンが世界から剥がされていく。 息苦しかった呪いの彩りが薄れていく。 呪いが消えかけている。 そして、役目を終えて地獄かあるいは天国へと還っていく。 世界は元通りにはならない。 それでも僕が生きていた世界は此処だったと思えた。 せめてもの情けだったのだろうか。 世界に残されたのは本当に僕だけになった。 人類最後の僕は最後に何を思うのだろうか。 眠りにつく前に僕は何を願うのだろうか。 いくつか浮かぶ疑問の答えは考えずともすでに僕の中にある。 目を瞑っては開き、君の寝顔を見つめ、君の手をそっと握り締める。 「もし、生まれ変わることができたら、今度は、君も自分も大切にしてみせるから。 もし、死後の世界があったならば、僕はもう一度君に告白しようと思う。 もし、生まれ変わることもなく、死後の世界もなかったとしても 僕が君を愛したことは僕が終わろうともきっと世界に刻まれるだろう。 僕の世界は終わっても、普遍の世界は続くのだから」 すべてをやり尽くしたのだろうか、なんだか眠くなってきた。 今すぐにでも眠れそうだ。 眠る前に一言だけ。 「君に伝えたい。ありがとう」 最後の呼吸は世界に大きく響き渡った。
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