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スーツ姿のいかにも仕事ができそうなサラリーマンといった風貌のその男は、オレの姿を認めるなり上から下へとぶしつけな視線を向ける。
こっちも負けられない。
ただでさえ学生という社会的には地位も名誉もない立場で気圧されそうな気持ちがしていたから、それをおくびにも出さず対峙してやる。
挑戦的なそんな視線など気にも留めていない風を装って、二人の向かいにドカッと腰をおろす。
そもそもなんで彼女とその男が並んで座って、オレが向かいに座んなきゃいけないんだよ。
おかしいだろ。
だらしなく腰で座ると男がため息まじりの鼻息をもらした音がかすかに耳に届く。
ムシャクシャする。
「で、話ってなに?」
男には目もくれず、彼女のほうだけを見る。
そういえば彼女はうつむいたまま。
今日はまだロクに目が合っていない。
今もオレと決して目線を合わせようとしない。
「彼女と別れてやってくれないか?」
「はぁ?」
意味がわかんね。
そもそも部外者のお前が言うかよ。
あんたに訊いてねぇし。
「今さ、オレはこいつと話してんだけど」
「ごめんなさい!」
オレの言葉を遮るように謝罪の意を口にすると、彼女は体をプルプルと震わせて頭を下げた。
はぁ?
マジで意味わかんねぇし。
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