第二章

36/58
168人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「お前の血ので?」 「王族の血は強いから、眷属以下ーー下位のヴァンパイアは飲めないけど、眷属にとっては体力促進剤になるんだよ」  これは、三百年前に偶然見つけた方法だ。  無茶をして動けなくなったイザークに、思いつきで血を与えたのだ。  すると、驚いたことに他の眷属を上回る身体能力を得られた。個体差はあるようだが、王族の血が眷属に力を与えるのは間違いない。  父も、兵力増強に使えると、喜んでいた。  ーーだが、デメリットもある。 「あの状態が続くのは、長くても十分程度。効果が切れたら体内の血が大幅に減少する。イザークにとっては本当に奥の手なんだよ」  ダルスの攻撃をかわし、一撃ずつ確実に攻撃を決めていくイザークを見ながら、俺は言う。  きっと、イザークもこの十分で、ダルスを退けるつもりだ。  俺が手を出すことがないよう、自分だけの力で。  本当に、親思いのいい子だ。 「イザークの力が尽きる前に、やれることをしようか」 「やれること?」  首を傾げるルーカス。  俺は頷きながら、彼の胸ぐらを掴んで立ち上がらせた。  ルーカスは驚いたように顔をこわばらせた。 「何を・・・・・・っ」 「いい加減、腹をくくって欲しいと思ってね」  俺の言っている意味が理解できているか定かではないが、ルーカスは黙ったまま、こちらを睨んできた。 「俺はイザークのように、生きる意志がないなら死ねーーと、お前に言うつもりはない。もし現状を少しでも変えたいなら、自分の足で立って、走れ!」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!