第二章

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***  ーー暗い。  何も見えない。  ここはどこだ?  手を伸ばしても虚空を掴み、落ちていく。  水面を漂っている感覚だけが体を包んでいる。  ふと、頭上から光が差し込んだ。  黒い壁が、光を浸食している。  光は範囲を狭めながら、私を照らしていた。  そういえば私は・・・・・・私は、何者だ? 「・・・・・・」  光の向こう側から、何か聞こえる。  聞こえない。  もっと大きな声で、叫んでくれ。 「ーー様、・・・・・・ヴィス様!」  今度は、少しだけ聞き取れた。  同時に、光の中に、誰かの顔が映る。  金髪の女と、黒髪の男だ。  私に向かって何か言っている。  でも、聞こえないんだ。  光に向かって這い上がろうと腕を伸ばすが、その途端、暗い底から無数の手が伸びてきた。  私の足を、胴体を、首を掴んで、さらに下へ引きずり込もうとする。  嫌だ。怖い。  上に行かせてくれ。  あの二人のところへーー!  ーーチカラニ飲ミ込マレルヨウデハ、外ヘハ出セナイ。  底から、低く恐ろしい声音が響く。  この手の主なのだろうか。  ならばどうか、私の願いを聞いてくれ。  ここから出してくれ。  ーー今ノオ前デハ、アノ方モ傷ツケル。己ヲ見ツケルマデ、ソウシテサマヨッテイロ。  それっきり、声は聞こえなくなった。  私は何度も腕を振り回し、狭まっていく光の方へ行こうともがく。  あの方とは誰だ。  私が誰を傷つけると言うんだ。  私はただ、守りたいだけなのに。  ーーあれ。何を、守りたいんだっけ・・・・・・?
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