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「ーーいいこと、ライちゃん。もし危険な目に遭う事があったら、絶対にエルヴィス兄様から離れちゃだめよ?」
母と過ごした最後の夏の日。
まるでこれが最期と言わんばかりに、彼女は念を押した。
「兄様はあなたを守る騎士。きっとあなたを守ってくれるわ」
十歳にも満たない俺は、なぜ? どうして? と、母に訊ねたはず。
母は、少し寂しそうに笑っていたっけ。
「運命とでも言うのかしら・・・・・・私たち王族ヴァンパイアはね、生まれたときから相手が決まっているの。
ーーたとえ他に好きな相手がいたとしてもね」
まだ幼かった俺には難しい話で、正直意味が分からなかった。
母が泣きそうな顔をしている理由も。
「ライちゃんは兄様が大好きだから、心配なさそうね。
きっとあなたが成人すれば、エルヴィスも騎士として目覚めるはず。ーー愛し合っていけるわ」
頬に触れた母の手は、かすかに震えていた。
おぼろげだが、彼女の頬には滴が流れていた。
「母様も、最期くらい大好きな人と一緒に・・・・・・彼といたかったなーー」
「坊、起きろ」
肩を揺さぶられ、俺は寝覚め悪く目を開けた。
目の前にはレオナルドの顔がある。
彼は俺の目元に指を伸ばし、訊ねた。
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