第二章

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「嫌な夢でも見たのか?」 「なぜ?」 「泣いているから・・・・・・」  驚いて目元に触れると、確かに濡れていた。  母との思い出を夢に見たせいなのか、それとも母の涙につられたのか。  少しだけ、胸が苦しかった。 「久々に、母の夢を見たんだ。亡くなる少し前の日に、話していた夢」 「それは・・・・・・羨ましいな」 「羨ましい?」  レオナルドは大きく頷いた。 「だって、俺の夢に出てくる姫様は、いつも人狼に殺される。楽しかった思い出の方が多いはずなのに、一度だって彼女と過ごした楽しい日が、夢に出てきたことはない」 「それは・・・・・・」 「別に構わねえさ。"お前はまだ幸せな夢を見るには早い"って事だろう」  彼は朗らかに笑っているが、それに対して俺は気の利いた言葉一つかけてやれない。  ただ彼の肩に手を置いた。 「いつか、母の方から会いに来るよ」 「いいや、姫様はあれで結構サディストだったからな。俺が泣いて懇願するまで、会いに来ないさ」 「それは・・・・・・」  母には申し訳ないが、あの人は確かに人をからかって遊ぶのが好きだった。  品位を重んじる父王にすらいたずらを仕掛け、これまた上品に笑っているような人。  天真爛漫な母に、皆が癒されていた。
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