第一章

11/43

170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「なぜ俺が・・・・・・」 「君はルーカスの上官だから、当然だろう。ついでに準備も手伝ってあげなさい」 「分かりました、団長」  ハリス副団長は大股で出口まで闊歩すると、顎で俺に、着いてこいと示した。  団長に軽く頭を下げてから副団長について行くと、彼の執務室に通された。  先ほどの団長の部屋と同じくらいの広さなのに、家具が必要以上に揃えられていないためか、余計に広く感じる。  上着を脱いで、薄手のシャツ一枚の姿になった副団長を見つめていると、彼は俺の視線に気づき、盛大にため息を付いた。 「はあ・・・・・・その辺の椅子に座れ。手短に説明をすませる」 「はい、失礼します」  言われたとおり近くの椅子に座ろうとすると、ふと棚の上に一枚だけ飾られている写真が目に入った。  写真立てのガラスは割れ、蜘蛛の巣のようにひびが入っている。  その中に納められた写真には、二人の青年が写っていた。  一人はハリス副団長だ。今とは違い、満面の笑みを浮かべた、快活な表情をしている。  その横で不機嫌そうに目線を背けているのは、短い黒髪の端整な顔立ちの男。どこかで見たことのある顔だ。 「この男・・・・・・」 「ーー触るな!」  写真立てを持ち上げた俺に、ハリス副団長の怒号が飛んできた。  猛然と近づいてきた彼は、俺から写真立てをもぎ取り、胸に抱えた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加