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「なぜ俺が・・・・・・」
「君はルーカスの上官だから、当然だろう。ついでに準備も手伝ってあげなさい」
「分かりました、団長」
ハリス副団長は大股で出口まで闊歩すると、顎で俺に、着いてこいと示した。
団長に軽く頭を下げてから副団長について行くと、彼の執務室に通された。
先ほどの団長の部屋と同じくらいの広さなのに、家具が必要以上に揃えられていないためか、余計に広く感じる。
上着を脱いで、薄手のシャツ一枚の姿になった副団長を見つめていると、彼は俺の視線に気づき、盛大にため息を付いた。
「はあ・・・・・・その辺の椅子に座れ。手短に説明をすませる」
「はい、失礼します」
言われたとおり近くの椅子に座ろうとすると、ふと棚の上に一枚だけ飾られている写真が目に入った。
写真立てのガラスは割れ、蜘蛛の巣のようにひびが入っている。
その中に納められた写真には、二人の青年が写っていた。
一人はハリス副団長だ。今とは違い、満面の笑みを浮かべた、快活な表情をしている。
その横で不機嫌そうに目線を背けているのは、短い黒髪の端整な顔立ちの男。どこかで見たことのある顔だ。
「この男・・・・・・」
「ーー触るな!」
写真立てを持ち上げた俺に、ハリス副団長の怒号が飛んできた。
猛然と近づいてきた彼は、俺から写真立てをもぎ取り、胸に抱えた。
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