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すごく大切な宝物のように写真を抱きしめる姿が、なぜか俺を苛立たせた。
「その写真の方は、同僚の方ですか?」
答えてくれるはずもないのについ訊ねると、驚くことに、ハリス副団長はか細い声で言った。
「・・・・・・俺の、たった一人の相棒だ。背中を任せられる、大事な奴だった」
副団長にとって、特別な人。
俺には憎しみの感情しか抱いてくれない人に、悲しい表情をさせるその男。
「その方は、今どうされているんです?」
「・・・・・・一年前に死んだ」
「あ・・・・・・すみません、無神経なことを・・・・・・」
「別に、おまえには関係のないことだし」
そう言って、副団長は写真を元の場所へ静かに置いた。
彼の細い指先が、黒髪の男を愛おしむように撫でる。
彼の心を未だ絡めて離さない男に、俺はきっとーー嫉妬している。
「あの、副団長・・・・・・」
「お前と無駄話をするつもりはない。お前は敵の情報を一発で頭に入れ、俺の手を煩わせなければいい」
顔写真の付いた二枚の書類を机に広げ、副団長は片方の書類を指さした。
「この銀髪はエルヴィス。現在ヴァンパイアの中では最強と言われる王族ヴァンパイアだ。接近戦はもちろん、王族特有の能力での戦闘も長けている」
確か、現存するヴァンパイアの中でも最高齢。
最も注意するべき相手だ。
「そしてこいつは、今ヴァンパイアの頂点に立つ男ーーライアン」
気のせいか、書類を指さすハリス副団長の手に、力がこもった気がした。
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