第一章

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「この王族は、何が得意なんですか?」 「こいつは・・・・・・」 「・・・・・・副団長?」  副団長は写真を指さしたまま、小さく震えていた。  彼に対して、常に冷静沈着なイメージを勝手に持っていたためか、意外だった。  怖がっているのか、憎んでいるのか。  彼が何を思ってこのヴァンパイアの顔を見ているか分からないが、一つだけ気づいた。  この王族の顔は、あの写真に写っていた黒髪の男とーーうり二つだ。 「副団長、この王族ヴァンパイアはーー」 「こいつが、俺の相棒を殺した。炎を操るのが得意な奴だから、気をつけろ」 「は・・・・・・」  何も聞くな。そう、副団長は言っているように見えた。  今彼が言ったことが確かなら、震えている理由は怒りと憎しみのせいだろう。  しかし、ろうそくの炎のように揺らめく眼差しは、愛憎がこもっているように感じられた。   *** 「ーー我らが愛し子よ。その声高く天へ捧げ、伸ばした手は希望を掴もう。父母の躯を苗床に、その身は来る来世への羽とならん」  ずっと昔、まだ俺が幼い頃母が歌ってくれた子守歌を口ずさみ、俺は地下にある研究室でペンを走らせていた。  この歌を歌えば、お腹の子は嬉しそうに胎内を転がる。  小さな命がすくすくと育っている事を直に実感できるのは、母胎である俺の特権だった。
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