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そう言うが早いか、エルヴィスは俺の頭を抱き寄せた。
エルヴィスと額を重ね合わせると、脳内に映像が流れ込んでくる。
「新しい能力、早速使うのか」
「使える物は使うべきだろう」
そう。エルヴィスは氷を操る以外に、他者の記憶のコピーや、自分の記憶を他者に見せたりできる能力を新たに得た。
今まで複数の能力を有した王族はおらず、エルヴィス自身驚いていたが、ありがたい能力だった。
まだ完全に能力をコントロールできていないようで、俺の脳内に流れ込んできた映像は断片的だ。
泣き崩れているカトリーヌ。
そこへ、なだれ込んでくる聖騎士団。
彼らは手に銃に似た機器を持っており、それがデズモンドへ向けられた。
片手でかばった左目は無事だったが、右目が潰れる。
デズモンドの受けた焼けるような痛みが、はっきりと伝わってきた。
「これは、もしかして・・・・・・」
「日光を真似た光線だろう。デズモンドは片目だけですんだが、カトリーヌは両目ともやられたそうだ」
間近にあるエルヴィスの目が、怒りで燃え立つのが分かった。
彼の頬を撫でてなだめていると、新たな映像が浮かび上がった。
頭が三つあるーー狼?
「なんだ、これ。三頭犬?」
頭の三つある狼が、何十匹と迫ってくる。
デズモンドはカトリーヌを抱え、結界の境界線がばれないよう必死で逃げる。
聖騎士団をある程度引き離すと、彼は結界の中に飛び込み、息を潜めた。
・・・・・・記憶は、そこまでだった。
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