第一章

18/43

170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
 俺の張った結界は、効力が強い代わりに、術者と繋がりが深いものだ。  結界自体に損傷を受けることはまずないと思うが、攻撃されればその衝撃が直に俺の体に伝わる。  まるで、俺の体が攻撃されているような感覚に襲われるのだ。 「くそ、やっぱり俺の結界じゃすぐにばれたか・・・・・・」  母は俺よりも呪術が得意な人だったらしいが、彼女の張った結界は部外者を弾くのではなく、透過させるものだったそうだ。  人や人狼をすり抜けさせ、結界の内外を曖昧にすることで、王国の存在を守り通していた。  それに比べて俺の結界はおざなりもいいところだった。 「外に群がってる奴らを追い払わないと・・・・・・っ」 「馬鹿、お前はここで結界を維持しろ! 上は私たちが対処する」 「待って、エルヴィスーー!」  俺を押さえつけるようにして椅子に座らせると、エルヴィスは部屋を飛び出していった。  それと入れ替わるようにして現れたイザークは、俺の姿を見るなり血相を変えて駆け寄ってきた。 「殿下!?」 「落ち着け、心配ない」 「ですがお顔の色が・・・・・・」 「俺より、エルヴィスの側にいてやってくれないか。あいつ、上へ向かったんだ」  今頃眷属をかき集めて、地上へ向かっているに違いない。  外は夜だから太陽については心配ないが、敵は日光照射機や三頭犬を連れている。  敵の規模も分からない以上、油断できない。 「戦いに出た皆に、出来る限り結界の外に出ないよう伝えてくれ。俺は、ここで国を守る」 「・・・・・・御意」  イザークは素早く一礼し、きびすを返した。  一人きりになると、心細さからか、体を襲う衝撃が余計強く感じる。  振動し続ける室内で体を丸くしていると、赤ん坊が胎動した。 「・・・・・・そうだな。俺の側には、お前がいてくれるものな」  まだ小さく、可愛らしく動き回る事しかできない我が子の存在が、とても心強かった。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加