第一章

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 屋敷内にあった眷属や配下たちの気配が消え失せ、数十分ほど腹を撫でて気持ちを落ち着かせていたが、 「・・・・・・?」  不意に、部屋の外に何かの気配を感じ取った。  覚えのない匂い。  絶え間なく襲う鈍痛に耐えながら、この部屋にある唯一の扉を睨んだ。 「誰だ。遠慮しないで、入っておいで」  すると、扉が重々しい音を立てて、ゆっくり開く。  俺は腹を守るように抱え、扉との間に出来た隙間を凝視する。  ゆったりとした足取りで室内に現れたのは、見覚えのない黒髪の男。  彼は薄汚れた外套を肩に掛け、俺を見据えていた。 「君はーー?」  誰だ、と問おうとした矢先だった。  男は外套を跳ね上げ、手にしていた片刃の剣を構えると、俺に向かって駆けだした。  長めの前髪の隙間から、俺たちと同じ紅の瞳が鋭く光る。 「覚悟しろ、ヴァンパイアの王」  眼前に迫る刃。  俺はーー。 ***  ライアンを一人残し、私は眷属たちとともに地上へ出た。  雲の晴れた見事な夜空は、普段であればその美しさをゆっくりと堪能できたことだろう。  だが、今は夜空を愛でている暇はなかった。  普段は不可視の結界が、奴らの攻撃によって壁面を露わにしていた。
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