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すると、結界で隠されていた私の姿が、奴らの目に映ったようだ。
攻撃していた騎士団は驚いて手を止め、手にしていた武器を私に向けた。
「その程度のおもちゃで、私が殺せないことは知っているだろう?」
騎士団はわずかに渋面を浮かべる。
その群が左右に割れ、出来上がった道を見知った顔が悠然と歩いてきた。
騎士団長マースと、腰巾着のローガン。
本部を崩壊させた日以来、初の顔合わせだ。
「久しぶりだな、エルヴィス。地下でのネズミ暮らしはどうだ?」
「嫌みな言い方は相変わらずだな、マース。地下はライアンのおかげで快適だよ」
我が妻の名が出た途端、マースの顔から笑みが消えた。
妬み、憎しみ、負の感情が全て表へ出たように、彼の表情が見事に崩れる。
奴が悔しそうな顔をすると、私の心は対照的に穏やかになる。
ライアンはお前のものではない。
あの子は生まれたそのときから、永遠に私のものだと決められているのだから。
「我が愛しい妻ーーああ、ライアンのことだが、彼は地下で穏やかに過ごしているんだ。騒ぐつもりなら、お帰り願いたい」
「ここはあの方が過ごすべき場所ではない! あの方は私の・・・・・・我が腕の中にいるべきなのだ!」
みっともなく口角から泡と怒号を飛ばすマースを見たら、ライアンは悲しむのだろうか。
あの子の悲しむ顔は、見たくない。
「お前にライアンを渡すつもりはない。帰らないならーー貴様をここで殺す」
「やれるものならやってみろ」
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