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マースの命令で、騎士団は一斉に銃弾を放った。
近距離での戦闘を避けるためか、奴らは誰一人近接武器で私に立ち向かってこない。
・・・・・・と思ったが、マースの横でしかめっ面をしていた腰巾着が、単身で私の前に飛び出した。
狼の前足のように両手を変化させ、左右不規則に動き回りながら近づく彼。私は両翼で弾丸を弾きながら、氷で形成した剣を取り、ローガンを迎え撃った。
彼の爪と私の剣がぶつかり、甲高い金属音が鳴り響く。
何度か打ち合い、至近距離で睨み合った。
この一年で、面構えがだいぶ凛々しくなっていた。
「いい顔つきになったじゃないか。ライアンが見たら、何と言うだろうな」
「あいつは死んだ。俺の知っているライアンは、もうこの世にはいない」
「そうなのか? ライアンはお前のことを懐かしんでいるというのに・・・・・・」
「・・・・・・っ」
おもしろいほどに、ローガンの顔に動揺の色が浮かぶ。
表面は取り繕えても、やはりこころはまだライアンを求めてやまないのだろう。
私にすれば腹立たしいだけだが、奴の動きを鈍らせるのはいい材料だ。
「ライアンに伝えておくよ。ローガンはお前のことを死んだと思いこんで、戦っているとね」
「てめえーー!」
怒り任せに浴びせられる攻撃は避けやすい。
がむしゃらに振るわれていたローガンの腕を掴むと、大きく振りかぶって結界に叩きつけた。
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