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「この人狼の相手は私が引き受けますので、あなたはマースをお願いします」
「なぜお前が私に命令している?」
「心外ですね。私はお願いしているんですよ」
「眷属には不利な戦いだ。おとなしくーー」
「もう遅いみたいですよ」
イザークの視線を追って背後に目をやると、結界の中にいたはずの眷属や配下たちが、一斉に外へ出てきた。
あれほど中にいろと言ったのに、なぜ言うことを聞いてくれないんだ。
特殊能力もない、生身で戦う事しかできない彼らを、むざむざ死なせるわけにはいかないというのに。
「お前たち、結界の中に戻れ!」
「申し訳ありませんが、そのご命令には従えません」
デズモンドが私の前に立ち、言った。
「眷属が主に守られてどうするのです? 我らは陛下と、エルヴィス様を守るための盾となりたいのです」
彼の横に従うカトリーヌも、私を見て強く頷いた。
全員が同じように強い光を宿した目で、敵を見据えている。
彼らの覚悟が空気に溶け込み、私の中へ直に入り込んでくるように感じられた。
「そろそろ、内輪での話は終わったかな?」
上着を脱ぎ、鞘から剣を引き抜いたマースが気怠げに訊ねてきた。
「待たせて申し訳ない。今相手をしてやろう」
「騎士団も暇じゃないのでね。早く片づけて、殿下を新規師団本部へお招きしたいのだが」
「せっかくの申し出だが、ライアンを地下から出すわけにはいかない」
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