第一章

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「ベースはオオカミだ。そこに、志願者の首を二つ取り付けただけだよ。正式名称は、ケルベロス」 「・・・・・・ライアンは、敵であるこの者たちを哀れんでいた。こんな姿に変えられ、苦しんでいるに違いないと」 「その点はご心配なく」  マースが懐から小さなリモコンを取り出し、どこかのボタンを押す。  すると、手前にいたケルベロスの首にある機械が、高い音で断続的に鳴り始めた。  ケルベロスは音に怯えて尻尾を股の間に挟んだが、その瞬間、点滅していた機械が爆発し、三つの頭を吹き飛ばした。  地面にごろりと転がった三つのオオカミの頭のうち、二つが蒸気を上げて形を変えていく。  完全に蒸気が消えると、オオカミの頭だったものは、白目を剥いて絶命している人間の男の頭へ変わっていた。 「ーーこのように、いつでも殺すことが出来るのだよ」 「下衆が」  敵に情などくれてやるつもりもないが、たった今首を飛ばされて死んだ者たちは、今からこの下衆の為に戦おうとしていたはず。  それを、指先一つで簡単に殺した。  私たちではあり得ないことだ。  仲間を愛し、仲間のために命を懸けるヴァンパイアには、とうてい出来ない。 「今夜で終わらせてやる」  騎士団員や三頭犬に向かっていく眷属たち。  私に襲いかかろうとしていたローガンを、イザークがくい止めている。  あの夜果たせなかったマースとの一騎打ちを、今ここで再演してやろう。
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