第一章

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***  俺めがけて突き出された白刃。  通常であれば簡単に避けられる速度なのに、妊娠してから体がひどく重く、動きづらかった。  それでも子供を守るため、最小限の動きで避けようとしたが、俺が避けるより先に剣先が喉のすぐ近くで停止した。  男は長く息を吐くと、俺を見下ろす目を細めた。 「あなたは殺すなと命令されている。おとなしく俺と来い」 「これは・・・・・・突然のお誘いだな。君にそんな命令を出したのは、もしかしてーー」 「マース・ブラックフォード聖騎士団長。あなたも知っているはずだ」 「やっぱり・・・・・・」  あの執念深さには感服する。  しかし、なぜこの男は結界を通り抜けられたのだろう。  ヴァンパイアしか通れないはずなのに。 「君、どうやって結界を通過した? ヴァンパイア以外は弾かれるはずだが?」 「俺は特別だから。団長のために存在する、切り札だと言われた。ーーそれでも、無傷では通れなかったが」  さすが王の張った結界は強い、という男の顔には、火傷があった。無理に結界を通ったせいで負ったものだろう。  恐らく、服で見えない場所にも火傷を負っているはずだ。  すでにただれた傷口の再生が始まっているが、俺たちに比べると治りは微々たるもの。  この様子だと、完全に治るには丸一日かかる。  おずおずと傷に手を伸ばすと、首に添えられた剣が、少しだけ肉に食い込んだ。
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