第一章

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 男の瞳が迷うように揺れる。  透き通った紅色の瞳は、明らかにヴァンパイアのものだった。 「君、もしかしてヴァンパイアの血が流れているんじゃないか?」 「この俺に、汚らわしいヴァンパイアの血が流れているはずないだろう!」  無造作に振るわれた剣が、俺の髪を数本切り払う。 「俺はヴァンパイアでもなければ人狼でも、人間でもない。ただ団長の為に尽くす、選ばれた存在だ」  この様子だと、本人も自分が何者なのか知らされていない。  ・・・・・・違う。何者なのか悟られないよう、マースが刷り込んでいる。  外見はどう見てもヴァンパイア。でも本人がそれを認めようとしない。 「ーー君も、マースの実験による被害者か」 「どういう意味だ」 「気になるなら、君が惚れ込んでいる団長さんに聞くといいよ」 「聞く気なんかない。俺にとって、あの人の言葉が全てだ。だからーー」  闘気をまとった男は、得物を構えて俺に詰め寄った。 「団長の命令により、あなたを捕獲する。出来る限り傷は付けるなと言われているから、無駄な抵抗はしない方がいい」 「俺も痛いのは嫌いだから、そうしたいのは山々なんだけど」  俺は机の引き出しを開け、二丁の拳銃を取り出した。  胴体も弾も全て銀で出来た、俺の新しい武器だ。 「俺には今、守らなきゃいけないものがたくさんある。ここでおとなしく捕まるわけにはいかないんだよ」 「他人を守る心配より、自分を守れるかどうか心配するんだな」
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