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「ごめん、ね・・・・・・びっくりしたね」
「なんで・・・・・・」
「俺の、お腹・・・・・・子供がいるんだ。大事な、俺の子」
「そーーそんなの守るために、自分の体を犠牲にしたのか!?」
「・・・・・・子供の方が、大事だから」
この子はまだ、自分では何一つまともに出来ない。
俺が守ってやらないといけない。
「ぐ・・・・・・っ」
「ちっ」
男は俺に駆け寄ると、胸に刺さっていた剣を引き抜き、自分の外套を俺の胸に当てた。
「おい、さっきの変な術を自分に使え!」
そんな事をしなくても、ヴァンパイアなら自然に治る。
治るはずなのに・・・・・・。
「おか、しいな・・・・・・。治りが遅、い・・・・・・」
手のひらを強く握りしめたときに出来た傷も、まだうっすら残っている。
俺の、ヴァンパイアとしての力全てが、弱っているのだと確信した。
自分の胸に手をおいて術式を施すが、せり上がってくる血が邪魔をし、うまく式を唱えられない。
朦朧とする意識の中、なぜか男が焦って止血しようとしているのが見えた。
俺を捕らえに来たはずなのに、どうしてこの男は俺を介抱しているのか。
おかしくて笑いがこみ上げた。
同時に血も口から吹き出し、首を伝う。
このままでは本当に危ないかも知れない。
子供だけでも、なんとか助けたいのに・・・・・・。
「エル、ヴィス・・・・・・」
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