170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「ぐ・・・・・・っ」
腰に回っていたマースの腕を掴んで捻り上げると、俺は拘束から逃れ、愛する夫の元へ転がるように駆けだした。
今や走る速度も人より少し早い程度。
懸命に手足を動かして駆けるが、エルヴィスのもとへたどり着くより先に、道を塞ぐようにローガンが現れた。
俺は慌てて歩を止め、目の前の旧友と、背後にいるマースを交互に睨む。
不思議と、この状況をただ見ているだけの、あの男。
手を出すべきか否か、迷っているようにも見えたが、ローガンが戦闘に加わったとたん、彼の顔から迷いが消えた。
すぐさまローガンの横へ移動し、俺を見下ろす。
面倒な状況になってしまった。
この体でマース達と戦うのは、少々ーーいや、かなり厳しい。
だが、我が子のため、仲間のためにも負けられない。
己の爪のみで戦おうと身構えると、重厚な姿からは想像できない俊敏さで、エルヴィスが俺の側へ現れた。
マントの影に俺を隠すと、うつろな瞳でマースを見据えていた。
「どうやら、その方は殿下を守るという意志のみで動いているようですね。自我のかけらもない」
動きが大きく雑だが、エルヴィスは騎士のごとく俺のそばを離れない。
血を流し、体に負担を掛けてまで、俺を守らなくていいのに。
俺はエルヴィスに寄り添い、額を押しつけた。
「許してくれ、エルヴィス・・・・・・縛」
俺の血を少し使って拘束符を作り出すと、エルヴィスの腕に術式を刻む。
術式は一瞬でエルヴィスの体を駆けめぐり、脱力させた。
最初のコメントを投稿しよう!