第一章

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 どろどろと溶け始めた鎧が、地面に真っ赤な水たまりを形成する。  全身真っ赤に染まったエルヴィスは、気絶したまま俺に倒れ込んだ。  血塗れになっても美しい夫。  俺のために血塗れになった、大事な大事な人。  彼を体を大切に抱え、俺は、 「イザーク!」  眷属の名を呼ぶ。  ちょうど三頭犬の頭を握りつぶしたイザークは、すぐさま俺の足下へ片膝をついた。  他の配下達も俺を囲むように集まり、マースを睨んだ。 「イザークはここにおります、殿下」 「エルヴィスを頼む。仲間も全員結界の中へ下げろ」 「殿下はどうされるのですか」 「・・・・・・奴らを退ける」 「殿下!?」  垂れていた頭を上げ、イザークは俺の服の裾を握った。 「そのご命令は承伏致しかねます! 御身はお世継ぎを身ごもっていらっしゃるのにーー!」 「能力を限界まで使う。お前たちも巻き込みかねない」 「しかしーー」 「二度も言わせるな。ーー下がれ」 「・・・・・・御意」  押し殺すように応じたイザークは、エルヴィスを抱き上げる。  一斉に結界内へ退避し始めた仲間を背後に、俺は両腕を広げた。  破裂音を立てて炎が現れ、心許なく俺の周囲を漂う。  全ての力を出し切れず、無理に能力を使っているせいで、額から汗が噴き出す。  ちらりと背後を見ると、仲間達は全員結界内へ逃げ込めたようだった。  俺は結界の不可視を解き、俺の力を防げるよう、防御力を上げる。そのかわり、中にいるものは外へ出られない。  イザークが結界に張り付き、俺に何か叫んでいるが、今は聞いていられない。  間髪入れずに襲いかかってくる三頭犬を炎で焼き殺しながら、長く変形させた爪で騎士団のーーかつての仲間の首を次々とはねた。
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