第一章

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 首なしの騎士達の間を縫い進み、マースへ近づく。  ここで仕留めなければ、また悲劇の繰り返しだ。 「はああああああっ」  マースを守るように立ちふさがっていた騎士を一太刀で斬り伏せ、俺はみっともなくぜえぜえと荒い呼吸を繰り返した。  ローガンと男ーールーカスが、わずかに身構えてマースの前に進み出る。  一人悠然とたたずんでいたマースは、片頬を引きつらせながら俺に訊ねた。 「殿下、ご懐妊されているというのは、本当なのですか?」 「・・・・・・ああ」 「お相手は誰なのです?」 「お前は分かっているだろう、マース」 「・・・・・・エルヴィス様とのお子が・・・・・・」  握りしめていた剣を取り落とし、マースは頭を抱えた。 「そんな、私の殿下が・・・・・・汚されてしまった!」  狂ったように頭をかきむしるマース。  それを振り返り、ルーカスは心酔する騎士団長殿に手を伸ばす。 「あの、団長。大丈夫ーー」 「私の心配などしている場合か!? 今すぐ・・・・・・今すぐ殿下をここに連れてこい!」  泡を飛ばして怒り狂う上司を目の当たりにし、ルーカスはびくりと肩を震わせる。  そのまま俺を見やり、逡巡しているようだった。  親の言いつけを守るかどうか悩む、幼子のように。  すると、ルーカスを後ろへ突き飛ばし、ローガンが前に出た。 「こいつは俺がやる。お前は団長の側を離れるな」  俺に対して何の感情も浮かんでいない、虚ろなまなざし。  ほんの一年半前まで一番の理解者だった男が、俺に爪牙を向ける。  俺も、身構えた。
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