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「来いよ、ローガン。久々に組み手の相手でもしてやろうか」
「気安く俺に話しかけるな、ヴァンパイア」
もう俺の名すら呼ばない。
ドンーーと地面を蹴り、ローガンは俺に接近した。
制服の腕の部分が弾け飛び、狼の前腕に変化したローガン手が突き出される。
月光を浴びて輝く狼の爪。体を捻って避け、俺も手を一閃した。
互いの爪を防いでは薙払い、確実に急所を狙う。
こうして戦っていると、不意に昔の情景が頭をよぎる。
ふざけながら訓練する俺たち二人の姿。
こみ上げてくる懐かしさを飲み下し、俺はローガンと手を掴み合った。
握りつぶさんばかりに、互いの手を強く握る。
手の甲に爪が食い込み、俺たちの手から血が滴った。
至近距離でにらみ合い、互いの体を押し合っていると、ローガンが訊ねた。
「お仲間を守るために、トップのお前が一人戦うなんて・・・・・・何度同じ行いをすれば気が済むんだ」
そう。何度も何度も、俺は同じ間違いをしている。
イザークが俺を想い、絶叫している姿も幾度となく見た。
彼らからすれば、俺がよかれと思って行う行為が、心配でたまらないだろうに。
「でも、俺が前線に出ないと、仲間が死ぬ。ーーもう仲間を死なせたくないんだ」
「それでお前が犠牲になるって? はっ、大した正義感・・・・・・いや、偽善か」
「いつまでも拗ねてるお前には分からないだろう」
「ーーっ、黙れ!」
ローガンの足が、俺の足を蹴り払う。
地面に倒れ込む俺に馬乗りになると、首を絞め始めた。
一切手加減のない、本気の力で。
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