第一章

40/43

170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「か、は・・・・・・あっ」 「お前が・・・・・・お前が俺達を捨てていかなければ、こんな事にはならなかった! あの時団長の手を取って入ればーー戦わずに済んだんだ!」  仮に、俺がマースを選んでいたとして。  きっとそこに未来はなかった。  永遠に鎖に繋がれ、マースに陵辱されるだけだったはずだ。  けれど、俺は翼を得た。自由になるための翼を。 「俺は、マースに飼われるつもりはない・・・・・・お前にも」 「お前ええええええっ!」 「副団長!」  俺の首をさらに強く締めるローガンに、ルーカスが飛びついた。 「いけません、殺してしまいます!」 「うるせえ、触るな!」 「落ち着いて下さい!」  ローガンはルーカスを突き飛ばし、俺を憎々しく見下ろす。  また首を絞められる前に、俺は全力で炎を噴射した。  劫火がローガンとルーカスを押し流し、波のように周囲へ広がる。  炎の向こうで、ローガンがこちらへ来ようともがいているが、ルーカスに羽交い締めにされていた。  地面に転がっていた三頭犬や騎士、ヴァンパイアが死んだ後に残る赤い液体が、俺の炎で昇華していく。  奴らがおとなしく引き下がるまで、この炎を消してはいけない。  でも・・・・・・もう限界が近い。  体に負荷がかかり、心臓が早鐘を打つ。  子供にもどんな影響があるか分からない。 「もう帰れ。これ以上戦っても仕方なーー」  彼らに、そう諭した時だ。  炎の波の中からマースが現れ、剣を横へ一閃する。  衝撃波が炎をかき消しーー俺の腹部に、激痛が走った。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加