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「その方を丁重に本部へお連れしなさい。いいね?」
「は、はい」
「ローガン、後始末を」
ローガンとマースが離れていく。
俺の子は、マースが掴んだままだ。
あの子をどうするつもりか知らないが、親として、我が子があんな扱いをされて黙っているわけにはいかない。
地下では治りの遅かった傷もいつの間にか癒えており、わずかだが力も戻り始めている。
俺は翼を広げて飛び上がり、ルーカスの背後をとった。
彼の両腕を背中で拘束し、首筋に爪を突き付ける。
「マース、この男を殺されたくなかったら、俺の子を返せ」
「おやおや。そんな脅しで、私が言うことを聞くとでも?」
「いくらお前でも、自分を慕う者を切り捨てられるわけないだろう」
「・・・・・・私が人並みの良心を持っていれば、の話ですがね」
そう言うが早いか、マースは自分の剣をこちらに向かって投げつけた。
閃光のごとく迫る剣をなんとか避けたが、俺の動きを追っていたであろうマースが、きらりと光るものを投げた。
それはルーカスの胸に、吸い込まれるように突き刺さった。
「う・・・・・・っ」
短剣だ。
自分の部下の心臓に、短剣を突き刺した。
「だん、ちょ・・・・・・?」
自分の胸に刺さる短剣を見下ろし、ルーカスは呆然と立ちすくむ。
マースは、目元を細め、笑っていた。
「所詮君は捨て駒。代わりはいくらでもいるから、人質に取られたところで痛くもかゆくもない」
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