第一章

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「その方を丁重に本部へお連れしなさい。いいね?」 「は、はい」 「ローガン、後始末を」  ローガンとマースが離れていく。  俺の子は、マースが掴んだままだ。  あの子をどうするつもりか知らないが、親として、我が子があんな扱いをされて黙っているわけにはいかない。  地下では治りの遅かった傷もいつの間にか癒えており、わずかだが力も戻り始めている。  俺は翼を広げて飛び上がり、ルーカスの背後をとった。  彼の両腕を背中で拘束し、首筋に爪を突き付ける。 「マース、この男を殺されたくなかったら、俺の子を返せ」 「おやおや。そんな脅しで、私が言うことを聞くとでも?」 「いくらお前でも、自分を慕う者を切り捨てられるわけないだろう」 「・・・・・・私が人並みの良心を持っていれば、の話ですがね」  そう言うが早いか、マースは自分の剣をこちらに向かって投げつけた。  閃光のごとく迫る剣をなんとか避けたが、俺の動きを追っていたであろうマースが、きらりと光るものを投げた。  それはルーカスの胸に、吸い込まれるように突き刺さった。 「う・・・・・・っ」  短剣だ。  自分の部下の心臓に、短剣を突き刺した。 「だん、ちょ・・・・・・?」  自分の胸に刺さる短剣を見下ろし、ルーカスは呆然と立ちすくむ。  マースは、目元を細め、笑っていた。 「所詮君は捨て駒。代わりはいくらでもいるから、人質に取られたところで痛くもかゆくもない」
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