第二章

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「ルーカス? どうした?」  ヴァンパイアの王が俺の顔をのぞき込む。  そして、俺の目元を指先で拭った。  ・・・・・・俺は、泣いているのか? 「もう少し眠るといい。お前はただでさえ回復力が低いんだ」  ヴァンパイアの王が俺の額に手を乗せる。  じょじょに瞼を下げられ、俺はされるがまま目を閉じた。 ***  再び眠りに落ちたルーカスを見つめた後、俺は椅子から立ち上がった。 「この男から目を離すな。起きたら、すぐに俺を呼べ、いいな」 「御意」 「エルヴィスの具合は? 今誰が看てる」 「デズモンド様と、カトリーヌ様がついておられます。未だ意識は戻られていないようです」 「・・・・・・分かった。後は頼む」  深々とお辞儀をする彼らの前を通り過ぎ、俺は独房を出た。  出口に控えていたイザークが、俺の肩に上着を掛ける。  黙ってそれに袖を通し、俺はエルヴィスの部屋へ足を向けた。  歩きながら、王国の外に意識を向ける。  より強力で、敵の攻撃を受けても響かない確固とした結界を張り巡らす。  以前の結界よりも集中力と精神力を要するが、どうでもよかった。  今は何かに集中していないと、心が折れてしまいそうだった。
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