第二章

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「イザーク、周辺の見回りを強化しろ。敵を見つけ次第、倒せ。狙撃手も交代で配置。人選はお前に任せる」 「かしこまりました。ーーあの、殿下」 「なんだ」 「少し、お休みになった方がよろしいのでは?」 「必要ない」 「ですが、臓器を雑に奪われた後ですし、お体にどんな影響があるかもーー」 「必要ないと言っているだろ!」 「あ・・・・・・」  イザークは足を止め、俺を怯えた目で見つめていた。  周囲を行き交うヴァンパイア達も、俺の声を聞いて体を堅くしている。  今の俺は、一体どんな表情をしているのだろう。  彼らの顔は、化け物でも見ているかのように怯えていた。 「・・・・・・怒鳴ってすまない。俺は大丈夫だから、お前達が休むといい」 「殿下・・・・・・」 「本当にすまない」  立ち尽くすイザークの頭を撫で、配下達の視線から逃げるように、エルヴィスの部屋に駆け込む。  ベッドサイドにかじりついていたデズモンドとカトリーヌは、俺を見るとすぐに姿勢を正した。 「陛下」 「エルヴィスの具合はどうだ?」 「・・・・・・未だ、昏睡状態です。血を失いすぎたせいなのか、鎧のせいなのかは分かりません」 「そうか」  真っ白なベッドに横たわり、静かな寝息を立てる夫は、まるで絵画から抜け出た天使のように美しかった。  血色のない雪色の肌、青みがかった銀髪、どれをとっても美しい。  石膏のようになめらかな肌を指の背で撫でながら、ぴくりとも動かないエルヴィスの瞼に唇を沿わせる。 「・・・・・・ごめん、エルヴィス」
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