第一章

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 人間であれば妊娠後一年たらずで出産するが、俺たちヴァンパイアの子供は、生まれるまで三年はかかる。  長命のせいか、成長がひどく遅いのだ。  だから俺の子も、この一年でようやく形をなしたーーというところか。  会えるのはまだ先だが、今は子供とのつながりを実感できる大切な期間。  俺は今、何よりも幸せな時を生きていた。 「早くお前に会いたいよ」  再びころんと子宮内で動いた我が子に頬を緩めながら、俺は晴天を仰いだ。 「パパ遅いな。まだ帰ってこないのかな・・・・・・」  昨晩、この近くで聖騎士団との大きな闘争があった。  エルヴィスは周辺の安全を確かめるため、デズモンドやカトリーヌを連れて出て行ったきりだ。 「まさか、何かあったんじゃ・・・・・・」 「私の心配をしている場合か?」 「あ・・・・・・!」  ふわりと俺の体を抱き上げ、俺の夫であるエルヴィスは微笑していた。  たった一晩離れていただけだが、彼のことが無性に愛おしく、抱かれたまま頬に唇を寄せた。 「お帰り、エルヴィス」 「あのなあ、また一人で地上に出て・・・・・・そんなに俺たちに心配をかけたいか?」 「そんなつもりじゃないけど、屋敷で皆の帰りを待つだけじゃ、落ち着かなくて」  結界や術式でここ一帯を守ってはいるが、外にいる仲間一人一人を守ってやることはできない。  ただでさえ世界中が俺たちの存在を認識し、ヴァンパイアをあぶり出して殺そうとしている。  俺一人だけ安全地帯に隠れているのは、どうにも気が引けた。
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