第二章

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 拘束符の効果はとっくにきれているのに、エルヴィスは目覚めない。  やはり体にダメージが残っているとしか考えられなかった。  彼の手を握って俯いていると、カトリーヌが、 「陛下、ご主人様はわたくし達が看ておりますので、少しでもお眠りください」 「もう聞き飽きたよ。皆同じ事を言うんだから」 「いいえ、これは子を宿した経験のある者として申しているのです」  俺の手をそっと握り、カトリーヌは膝を付いた。 「まだ人間だった頃、わたくしは子を流してしまいました。それまで一心同体であった我が子が突如いなくなる苦しみは、言葉では言い表せないほどでございましょう」 「・・・・・・」 「陛下、お心が弱っているときは、無理をせずお休みになるべきなのです。きっとご主人様もそうおっしゃいます」 「でも・・・・・・」 「逆の立場でしたら、いかがです? 陛下も休むように勧められると、わたくしは思いますが」  確かにその通りだが、子供のことが心配で眠気など少しも起きない。  剣も弾くほど硬化していたから、ある程度の物理攻撃には耐えられるだろうが、マースは何をしでかすか予想ができない。  酷いことをされていないか、心配でたまらない。  目の前で眠り続けるエルヴィスも、このまま目を覚まさないんじゃないかと怖くなる。  俺の不安を軽くしてくれるものが、ここにはない。 「・・・・・・ごめん。やっぱり眠れない」 「そうですか。では、ぜひご主人様の側に居て差し上げてください」
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