170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
拘束符の効果はとっくにきれているのに、エルヴィスは目覚めない。
やはり体にダメージが残っているとしか考えられなかった。
彼の手を握って俯いていると、カトリーヌが、
「陛下、ご主人様はわたくし達が看ておりますので、少しでもお眠りください」
「もう聞き飽きたよ。皆同じ事を言うんだから」
「いいえ、これは子を宿した経験のある者として申しているのです」
俺の手をそっと握り、カトリーヌは膝を付いた。
「まだ人間だった頃、わたくしは子を流してしまいました。それまで一心同体であった我が子が突如いなくなる苦しみは、言葉では言い表せないほどでございましょう」
「・・・・・・」
「陛下、お心が弱っているときは、無理をせずお休みになるべきなのです。きっとご主人様もそうおっしゃいます」
「でも・・・・・・」
「逆の立場でしたら、いかがです? 陛下も休むように勧められると、わたくしは思いますが」
確かにその通りだが、子供のことが心配で眠気など少しも起きない。
剣も弾くほど硬化していたから、ある程度の物理攻撃には耐えられるだろうが、マースは何をしでかすか予想ができない。
酷いことをされていないか、心配でたまらない。
目の前で眠り続けるエルヴィスも、このまま目を覚まさないんじゃないかと怖くなる。
俺の不安を軽くしてくれるものが、ここにはない。
「・・・・・・ごめん。やっぱり眠れない」
「そうですか。では、ぜひご主人様の側に居て差し上げてください」
最初のコメントを投稿しよう!