第二章

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 俺の横に椅子を持ってくると、カトリーヌはデズモンドを伴って部屋を出ていこうとした。 「あ、カトリーヌ」 「はい」 「君は、子供を失ったとき、どう乗り越えた?」  凛とたたずむ彼女は、この喪失感と絶望をどうやって打ち負かしたのか知りたい。  この苦しみから解放されたい一心で訊ねると、彼女は小さく笑った。 「陛下・・・・・・あなたはまだご子息を失ってはいないでしょう。奪われたのなら、奪い返すべきです」 「あ・・・・・・」 「ちなみに、私が立ち直れたのはご主人様とーーデズモンドのおかげです」  そっと、デズモンドの腕に触れながら、カトリーヌは恥ずかしそうに微笑んだ。 「ご主人様は私に生きる力を、デズモンドは愛情を与えてくれました。立ち直るには十分すぎるほどの温情を」 「カ、カトリーヌ」  いつも仏頂面のデズモンドも、ほんのりと頬を赤らめて眼鏡を押し上げた。  俺はというと、二人がそういう関係だったことを今知った。 「二人が愛し合ってるの、初めて知ったよ」 「そっ、そのような事は・・・・・・!」 「やだデズモンド、なに動揺しているの?」  楽しげに笑い声を上げるカトリーヌは、誰が見ても愛らしい女性だった。  誰かを慕い、慕われる可憐な女性。 「いいなあ。羨ましいよ」 「あら、陛下もご主人様に溺愛されているじゃありませんか」
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