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「溺愛というか、過保護というか・・・・・・」
「仕方がございません。ご主人様にとって、陛下は何にも代え難い存在なのです」
真顔でそう言われてしまうと、少し恥ずかしい。
居心地悪く身じろぐと、カトリーヌは小鳥がさえずるような軽やかな笑いを残し、デズモンドと共に部屋から出ていった。
きっと気を利かせてくれたのだろうが、眠り続けるエルヴィスと二人になったところで、孤独からは逃れられない。
むしろ、独りであることを実感する。
とりあえず、カトリーヌが用意してくれた椅子に座ると、閉まったばかりの部屋の扉が、遠慮がちに開かれた。
恐る恐る顔を覗かせたのは、部屋に戻ったとばかり思っていたイザークだった。
「あの、殿下・・・・・・」
「どうした?」
「いえ、その・・・・・・お飲物をお持ちしたのですが」
「ああ、ありがとう。入れ」
「はい」
先ほど怒鳴ってしまった手前、イザークの顔をしっかり見れない。
エルヴィスの手を握ってうなだれていると、ベッドサイドのテーブルに、血の入ったグラスが置かれた。
人間には鉄臭いだけの液体だが、ヴァンパイアにとっては最高のごちそうだ。
俺の喉がゴクリと音を立てる。
イザークは節目がちに、小さな声で言った。
「私の血です。本当はエルヴィス様の血がよろしいでしょうけど、殿下同様血を失われているので・・・・・・」
「そうだな。ありがとう、頂くよ」
そっとグラスを口へ運ぶと、甘く熟したプラムのような匂いが鼻孔をくすぐった。
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