第二章

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 血の匂いは個々によって異なるが、イザークの血は臭みがなく、飲みやすい。  唇にほんのりと暖かい血液が触れ、舌の上を滑り、喉奥へ通り抜けていく。  たった一口飲んだだけだが、体が軽くなったような気がした。  無意識にため込んでいた息を吐き出し、硬い面もちで控えているイザークに微笑を向けた。 「さっきは怒鳴って悪かった。少し、いらついていた」 「い、いえ。私も出過ぎた真似を致しましたので」 「お前は悪くない。俺が弱かったんだ」 「殿下?」  小首を傾げるイザーク。  俺は夫の手を撫でながら、自嘲した。 「皆を守るって口では言いながら、実際は自分の子供も守れなかった。エルヴィスにも無理をさせて・・・・・・」  もし、エルヴィスの意識がこのまま戻らなかったらどうしよう。  あの優しい声、見惚れるように美しい笑み、全て失ってしまう。  今こうして握りしめている手の感触も、どんどん堅くなってーー堅くなる? 「え・・・・・・?」  エルヴィスの手が、石のように堅い。  よく見ると、右手の指先から手の甲まで、少しずつ石化していた。 「エルヴィス!?」  こんな現象は知らない。  もしもこのまま石化が進めば、エルヴィスの全身が石となってしまうのだろうか。 「何が起こっているんだ・・・・・・」 俺はただ、夫の手を握ることしか出来ない。
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