第二章

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 術式の中に、石化を治すなんて都合のいい物もない。  せめて原因が分かれば・・・・・・。 「ーーそうだ。王宮にあった父の書斎なら、何か手がかりがあるかもしれない・・・・・・!」  三百年前に焼け落ち、その後どうなったのか知らなかったが、イタリアのガルダ湖の底に沈んでいると仲間から聞いて知った。  一般的にはサルカ川が水源となって形成された湖とされているが、本当はヴァンパイアの王宮を歴史から葬り去るために、意図的に作られたものだったそうだ。  当然、湖の周辺には聖騎士団が警備に当たっているだろう。  警備を交いくぐったとしても、湖に三百年も沈んでいた本が、無事である確証もない。  それでも、あの研究熱心だった父の蔵書に賭けるしかないと、なぜか強く思った。確信にも近い。  ちょうどこの地下王国も、ローマ郊外に位置している。  同じイタリア領域なのだから、行くしかない。 「イザーク」 「・・・・・・止めても行くのでしょうね、あなたは」  イザークは、半ばあきれ気味に天井を見上げた。 「お分かりでしょうが、ここからガルダ湖まではかなりの距離があります。それこそ、イタリアの中心から北の端まで行かなければなりません」 「知ってるよ。元聖騎士団本部や、フィレンツェを越えるんだろ?」 「ええ。ガルダ湖付近の大都市ミラノまで無事たどり着いたとしても、そこから湖までまだまだ距離があります」  飛べばかなりの日数を稼げるだろうが、日中に飛ぶと敵に見つかりやすい。夜のみ飛ぶとなると、昼間の移動は完全な徒歩。 「確かに楽な道じゃないけど、行かなきゃ後悔しそうな気がするんだ」 「・・・・・・分かりました。私も同行するという条件で、許可いたしましょう」 「お前も来るのか?」 「当たり前です! 王を一人で遠足に向かわせる馬鹿がいると思いますか!?」 「遠足じゃないんだけど・・・・・・」 「だまらっしゃい! ここの管理はデズモンド達に任せて、急いで出発しましょう」  イザークと手分けして荷造りに取りかかると、部屋の扉が叩かれた。 「陛下、よろしいでしょうか」
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