第二章

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 屋敷に常駐しているヴァンパイアが、頭を下げたまま立っていた。 「どうした?」 「捕虜が暴れているのですが、いかが致しましょう」 「ルーカスが?」 「はい。現在監視の衛兵が二人、押さえております」 「分かった。行こう」  ひとまず荷造りはイザークに任せ、俺は急ぎ足で牢へ向かった。  牢とは言うが、この王国に牢は存在していない。  ヴァンパイアは、悠久の時を共に過ごす仲間を、裏切らないからだ。  だから、ルーカスの身は屋敷の奥深くに仮設された、たった一つだけの牢に繋がれている。  ルーカスが寝かされている独房を覗くと、叫びながら体を激しく揺さぶっていた。 「拘束を解け! 俺に触るな!」 「おとなしくしろ!」 「触るなって言ってんだろ!」  まるで手負いの獣のようだ。  血走った目で衛兵を睨みつけ、怒鳴り散らす姿にはいささか恐怖を覚えるが、俺の目には、ルーカスが親を求める迷子のように見えた。  俺は牢に入ると、ルーカスを押さえていた衛兵に言った。 「すまないが、外へ出てくれ。二人にしてほしい」 「そのご命令には従えません。陛下を捕虜と二人きりにするわけには・・・・・・」 「平気だ。信じてくれ」 「・・・・・・御意」  渋々外へ出て行く衛兵。  俺は近くの椅子を引きずり、ルーカスのベッドサイドに腰掛けた。
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