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「ルーカス」
「・・・・・・何しに来た」
「君が暴れていると聞いた。嫌な夢でも見たのか?」
自分で聞いておきながら、彼を小馬鹿にするような事を言ってしまったな、と思った。
だが、意外にもルーカスは、小さく頷いた。
シーツを強く握りしめ、潤んだ瞳を隠すように、そっぽを向いた。
「どんな夢を見たんだ?」
「・・・・・・団長が、俺を切り刻んで捨てる。何度も何度も、捨てられる」
「・・・・・・」
「どっちが夢なんだ? 優しい団長か、俺に剣を向けた団長かーーもう、分からない・・・・・・!」
彼にとって、マースは親以上の存在だったに違いない。
腕だけ拘束具を解いてやると、ルーカスは両手で自分の顔を覆い隠した。
「俺には団長しか大切な物がないのに・・・・・・団長・・・・・・っ」
これは俺の推測にすぎないが、ルーカスはマースによって作られた命だろう。
最初に見たものを親と認識する雛鳥のように、彼はマースを盲目的に慕っていた。
一体何を使って生み出したのか想像もできないが、このままではルーカスが不憫だ。
横を向いたまますすり泣くルーカスの頭を撫で、俺はためらいがちに訊ねた。
「なあ、ルーカス。お前がよければ・・・・・・」
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