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円柱状の水槽の中で、鋼鉄の子宮が寂しげに揺れていた。
まるで、引き離された母胎を探すように。
右、左、上、下ーー。
意志を持っているように浮いては動く。
手足のように垂れ下がった筋が、「ここから出せ」と言わんばかりに、水槽の表面を撫でていた。
出すわけがない。愛しいあの人の体に巣くっていた悪魔を、封じ込めなくては。
火で焼いても燃えず、レーザーすら通さないこの悪魔を、何としても滅ぼさなくては。
「悪魔といえど、子供を殺すのは胸が痛むね、ローガン」
心にもない事を言ってみる。
横で水槽を見上げていたローガンは、黙っていた。
時折、脇に抱えていたクリップボードを確認しては、水槽を見つめる。
少し、憂いているようにも見えた。
いや・・・・・・怒っている?
「やけに静かだね、ローガン」
「・・・・・・いえ、そんな事はありません」
「好きな人の子をいたぶるのは、お気に召さないのかな」
「俺はあいつの事なんて・・・・・・」
「いいよ、隠さなくて。君が殿下を好きだって事は、何年も前から知ってる。ーー私に嫉妬していることもね」
「!?」
本当に、彼は予想通りの反応をしてくれる。
必死に強がっていた顔が崩れる瞬間ーー楽しくて仕方ない。
「君が誰を好きになっても、私にそれを阻む権利はない。気が済むまで嫉妬してくれてかまわないんだよ?」
「ご冗談を」
「はは。確かに、つまらないことを言ったね。・・・・・・本当は、ルーカスの事が気になっているんだろう?」
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