第二章

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 なんだかんだで仲間思いなローガンの事だ。  あの「なり損ない」の事も心配しているだろう。  その証拠に、ぶすっとふくれっ面をして、横を向いていた。 「あいつは本来敵種族同然でしたから、別に。ただ、刺さなくても良かったとは思います」 「本当に君はお人好しだなあ。あれの代わりはいくらでもいるのに」 「一応、短期間でも部下だったので・・・・・・」 「そうか・・・・・・じゃあ、すぐに代わりの部下を用意しないとね」  ちらり、とラボの奥を見ると、金魚鉢のような袋型の水槽の中に、いくつもの人影が浮かんで見えた。  代わりは、いくらでもいる。 「今度はどんな子がいいかな? 黒髪は決定事項だから、オプションで何か付ける?」 「おもちゃじゃないんですから、まじめに考えてください」 「ふふ、ごめんね」  この程度の雑談ができるほど、今の私はいささか心に余裕があるらしい。  殿下の顔を見ただけで、これほど心が安らぐとは思わなかった。 「すぐ次の任務が始まる。君は戦いに備えて、体を休めなさい」 「ーーじゃあ、俺をあなたの眷属にしてください。俺も団長と同じ、銀狼なんでしょう?」 「そうだよ」 「だったらーー!」 「無理なんだ」  できるものなら、とっくに眷属にして力を与えていた。  でも、出来ないのだ。 「この三百年の間に、何度も人間や人狼を眷属にしようとした。でも、出来なかった」
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