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「俺も何か手伝いたい」
「その気持ちだけでいい。今お前がすべきなのは、未来の王を守ることだ」
エルヴィスは俺の腹部を見下ろし、口元を緩ませた。
「この子を誰より近くで守れるのはお前だけ。他の仲間は俺が守るから、安心しろ」
「・・・・・・分かったよ」
納得しきっていないが、我が子を守るのが役目だと言われてしまうと、頷かざるを得ない。
エルヴィスの胸に額を押しつけて膨れ面をすると、お腹の中の子がころんころんと転がった。
慰められているようで、俺の中のもやもやとした気分が、少しだけ軽くなった。
***
エルヴィスに抱えられて屋敷に戻ると、玄関ホールでイザークが放心状態で待っていた。
俺に気づくや否や、猛然と立ち上がって駆け寄ってきた。
「殿下ああああ!」
「ただいま、イザーク」
「ただいま、じゃないですよ! どこほっつき歩いていたんですか!」
軽く抱きついてきたイザークの頭を撫でていると、頭上から小さなうなり声が聞こえた。
深々と眉間にしわを寄せ、目をすがめたエルヴィスが俺たちを見下ろしていた。
「イザーク、いつまでライアンを殿下と呼ぶつもりだ。この子はもう陛下だぞ」
「お黙りください。何百年経とうと、私にとって殿下は殿下なのです!」
「・・・・・・別にかまわんが、一つ忘れているぞ」
不意に肩を抱き寄せられたかと思うと、エルヴィスは俺の顎を指先で持ち上げた。
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