第二章

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***  車窓の外に広がる景色が、後ろへ後ろへ流れていく。  日差しを遮る厚い雲は、居所を変えて俺の胸にも流れ込んでいた。  何げなしに外を見ていると、断りもなく車窓をカーテンで覆われ、レンズを抜いた眼鏡が、俺の顔に掛けられた。 「いくら列車の個室とはいえ、気を抜いてはいけませんよ、殿下」  サングラスを外しながら、イザークが言った。  いつもは赤い瞳が、今は青色のカラーコンタクトで偽装されていた。 「すまない、まぶしかったか?」 「いいえ。ただ、敵に顔を見られては危険かと思いまして」 「・・・・・・そうだな」  変装をしているとはいえ、見るものが見れば、俺がライアンであることには気づくだろう。  あまり危険は侵せない。  車窓から離れて椅子に腰掛けると、向かい側に腰掛けていたルーカスが、居心地悪そうに身を縮めているのに気づいた。 「ルーカス? 大丈夫か?」 「・・・・・・平気だ」 「そうは見えないが・・・・・・俺と席を交代するか?」  椅子から立ち上がろうとすると、イザークが猛然と立ち上がり、俺を押さえ込んだ。 「殿下はそのまま座っていてください」 「でもーー」 「捕虜の管理は私が致します。どうぞ、その場にお座り下さい」 「お前なあ・・・・・・」  ルーカスさえよければと、今回のガルダ湖行きに同行させたのは俺だ。  本人も屋敷には残りたくないと言っていたし、見張りもかねて連れ出したまではよかった。
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