第二章

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 だが、思いの外イザークが警戒しており、ルーカスの手首と自分の手首を手錠で繋ぎ、監視していた。  ルーカスが冴えない表情をしているのも、無理はない。  俺はおもむろに手錠を掴むと、両者を繋ぐ鎖を引きちぎった。 「殿下!?」 「そう気を張り続けると、禿げるぞ」 「な、何をおっしゃるのですかーーって、どちらに!?」 「ルーカスと一緒に展望車両に行ってくる。お前はここで、協力者に連絡を取っておいてくれ」 「そんな勝手は許しませんよ、殿下! ちょっと、聞いてますかーー!?」  俺はルーカスの手を引いて個室を出ると、後ろ手に扉を閉めた。 「ここから出たら、お前を国に返す。いいな、イザーク」 「殿下、卑怯ですよ!」 「じゃ、よろしく」  個室の窓越しに、イザークに手を振る。  彼はうらめしそうに窓へ張り付いていた。  俺はルーカスの手を掴んだまま、細い通路を渡って後部車両へ向かう。  揺れているからなのか、酷く足が重い。  一瞬ふらつくと、ルーカスが体を支えてくれた。 「あ、悪い」 「・・・・・・髪」 「ん?」 「髪、なんで切った?」 「ああ、これか?」  指摘され、すっかり短くなった髪を摘む。  人として生きていた頃と、同じ髪型だ。 「今の時代、足首に届くほど長い髪の男なんて、いないだろ? それに、戦闘には邪魔になる」 「じゃあ、どうしてそんな顔をしているんだ」 「え?」 「ーー寂しそうだ」
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