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思わず、自分の頬に触れた。
まさか、会って間もない男に、そんな事を言われるとは思ってもみなかった。
・・・・・・正直、俺は髪を切るつもりはなかった。
俺達の世界では、髪の長さは長寿と権力の象徴と言われ、王族は皆髪が長かった。
そういう理由もあって伸ばしていたが、一番の理由はエルヴィスだ。
彼は、この長い髪を気に入っていたのだ。
俺の母と同じ、綺麗な髪だと言ってくれた。
でも・・・・・・今の彼に、俺を見る力はない。
彼がいつ目を覚まし、もう一度俺の髪を誉めてくれるかも分からない。
それならいっそのこと。
彼の重い瞼を開けるため、弱い自分もろとも断ち切ろうと思った。
この先待ち受けているであろう、多くの困難と闘うために。
「・・・・・・寂しくはない」
俺を見下ろし、憮然とした表情を浮かべるルーカスに、そう言って微笑んだ。
ちょうど展望車両につき、視界が明るくなる。
床以外がガラス張りになった車両は、光に包まれているように輝いていた。
乗客は俺達だけで、貸し切り状態だ。
窓辺に設えてあるソファに飛び乗ると、俺は自分でも驚くくらい、快活に笑った。
「逆に、髪を切ってすっきりしたよ。頭が軽い」
「・・・・・・そうか」
「俺の心配より、お前は自分の心配をしろよ? イザークはああ見えて怖いんだ」
「ーーそれは、あんたもだ」
「う、わっ」
いきなり、強い力でソファに押さえつけられた。
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