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両手首を捕まれ、ルーカスが覆い被さってくる。
息づかいが間近で感じられるほど近い距離から、深紅の瞳が俺を睨んでいた。
「あんたさ、俺が聖騎士団の一員だって事、忘れてないか? もともと俺達は敵同士なんだぞ」
「そうだけど・・・・・・急にどうしたんだ」
「あんたがあまりにも脳天気だから、警告してやってんだ。優しすぎると、こうやって足下をすくわれるぞ?」
ルーカスの顔が、俺の首筋に移動する。
生温かい吐息が首にかかり、俺は大きく身震いする。
その反応を楽しむように、ルーカスは喉奥で低く笑っていた。
「そんな反応をするから、俺を捨てたご主人様もあんたに執着するんだ」
「ルーカス」
「どうせ、俺なんてあの人にしてみれば、代えのきく道具ーー」
「ルーカス!」
捕まれていた腕を内側にひねって拘束を解くと、俺は逆にルーカスをソファに組み敷いた。
申し訳ないが、抵抗できないように両腕を背中で締め上げる。
ルーカスは口を引き結び、耐えていた。
「ぐ・・・・・・っ」
「少し落ち着いたらどうだ。今のお前じゃ、俺はおろかイザークにすら勝てないぞ」
「・・・・・・っ、馬鹿にすんな! 俺に勝てなかったくせに・・・・・・!」
「王族は本来、お前のような半端者に負けるほど弱くない」
「はっ、じゃああの時は、たまたま本領発揮が出来なかったって、言い訳でもするのか?」
「・・・・・・そうだな。あの時腹に子供がいたから、それが原因かもしれない」
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