第二章

18/58

170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
 両手首を捕まれ、ルーカスが覆い被さってくる。  息づかいが間近で感じられるほど近い距離から、深紅の瞳が俺を睨んでいた。 「あんたさ、俺が聖騎士団の一員だって事、忘れてないか? もともと俺達は敵同士なんだぞ」 「そうだけど・・・・・・急にどうしたんだ」 「あんたがあまりにも脳天気だから、警告してやってんだ。優しすぎると、こうやって足下をすくわれるぞ?」  ルーカスの顔が、俺の首筋に移動する。  生温かい吐息が首にかかり、俺は大きく身震いする。  その反応を楽しむように、ルーカスは喉奥で低く笑っていた。 「そんな反応をするから、俺を捨てたご主人様もあんたに執着するんだ」 「ルーカス」 「どうせ、俺なんてあの人にしてみれば、代えのきく道具ーー」 「ルーカス!」  捕まれていた腕を内側にひねって拘束を解くと、俺は逆にルーカスをソファに組み敷いた。  申し訳ないが、抵抗できないように両腕を背中で締め上げる。  ルーカスは口を引き結び、耐えていた。 「ぐ・・・・・・っ」 「少し落ち着いたらどうだ。今のお前じゃ、俺はおろかイザークにすら勝てないぞ」 「・・・・・・っ、馬鹿にすんな! 俺に勝てなかったくせに・・・・・・!」 「王族は本来、お前のような半端者に負けるほど弱くない」 「はっ、じゃああの時は、たまたま本領発揮が出来なかったって、言い訳でもするのか?」 「・・・・・・そうだな。あの時腹に子供がいたから、それが原因かもしれない」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加