第二章

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 それも含め、早くガルダ湖で資料を集めなくてはならない。  そうすれば、子宮が鉛のように堅く変化した理由も突き止められるかもしれない。 「今は自暴自棄になっても仕方ないが、冷静さも大事だぞ」 「うるさい! お前なんかに、俺の何が分かるんだよ!」  力任せにはねのけられ、俺の体がのけぞる。  それを狙ってルーカスが飛びかかってきたが、俺が両目に力を込めると、彼の体が硬直した。 「な、なんで・・・・・・体が動かな・・・・・・」 「洞察といって、王族の持つ特殊能力だよ。人狼以外の生き物なら、全て支配できる。ーーヴァンパイアも含めてね」 「ーーっ、俺は、ヴァンパイアじゃねえ!」 「でも、俺の洞察が利くって事は、少なくとも人狼じゃない。人かヴァンパイアか、はたまた別の種族かって事だ」  洞察の力を緩めると、ルーカスはその場に座り込んだ。  強制的に体の動きを止められた余波か、動けずにいるルーカスの肩を支えると、俺はソファに彼を座らせる。  見開かれた目は、俺ではなく床に向けられていた。  自分の信じていた何かが崩れ、絶望したような顔。 「俺が言える事ではないが、どの種族であろうとお前はお前だと思うぞ」 「・・・・・・うるさい」 「人であっても、人狼であっても、ヴァンパイアであっても、ルーカスという男の本質は変わらない。俺はそう思うけどな」 「うるさい!」  勢いよく立ち上がり、俺の襟を掴み上げたルーカスは、泣いていた。
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